湘南・鎌倉の「海の家音楽禁止・クラブ化防止」海水浴客減少も健全化


2013年4月、海水浴シーズンを前に発表された「片瀬海岸西浜海水浴場」での音楽放送全面禁止。
一部店舗が大音量で発する重低音のミュージック。「クラブ化」した店内および海岸で昼間から飲酒して騒ぐ客。騒音や傷害で寄せられた110番通報は毎夏500〜600件を超え、海水浴場組合が「音楽禁止」「クラブ化防止」の自主規制を行ないました。

片瀬海岸西浜の海の家音楽放送全面禁止

この「片瀬西浜音楽禁止」を経た今夏、湘南・鎌倉の海の家にはどのような変化があったのか。9月1日で海水浴場の営業が終了した今、調べてみました。
■詳細:[片瀬「海の家音楽全面禁止」と鎌倉「海水浴場ネーミングライツ
【片瀬海岸西浜・片瀬海岸東浜・辻堂海水浴場】

家族連れ増え健全化|タウンニュース

片瀬海岸西浜で今夏、海の家での「音楽放送全面禁止」を実施。管理する江ノ島海水浴場協同組合は、「安心して来られるように」と定めた自主ルールに、「家族連れが増えた」と手応えを感じている。
昨年)、一昨年と西浜の一部の海の家で、大音量の音楽を流し、若者たちが騒ぐ「クラブ化」が問題となっていた。藤沢市では、東浜、西浜、辻堂海岸の3つの海水浴場に対して「海水浴場開設(設置)に向けての要望書」を提出。「クラブ化」の店舗形態での出店を2013年度以降させないことや、暴力団に営業関与させないこと、海の家の従業員が刺青やタトゥーを露出しないことを要求した。
昨夏(2012年)の東浜、西浜、辻堂海岸の海水浴客数は、それぞれ110万3230人、265万300人、4370人、計375万7900人だった。今夏(2013年)は東浜、辻堂海岸は昨年並みを見込んでいるが、西浜は3分の1程度減り200万人を切る見通しという。
江ノ島海水浴場協同組合では、「減った海水浴客は、クラブ化した海の家に来ていた若者。その分、家族連れが多くなり健全化できた。110番件数も昨年604件から5分の1程度になっているのでは」と話す。来年以降については、「ダンス音楽は禁止だが、BGMとしてアコースティックミュージックなどは流す方向。安全安心を第一に話し合っていく」という。

ここ数年「クラブ化」が目立った片瀬海岸西浜。海水浴客は前年比3分の2程度となったものの、環境は改善(健全化)されたとの見識。しかし西浜の音楽禁止を受け、クラブイベントを目的とした客が、鎌倉や逗子海水浴場へ流れたとの意見もあります。
【腰越・由比ガ浜・材木座海水浴場】

鎌倉市海水浴場(腰越・由比ガ浜・材木座)では、営業を22時までとする「営業時間の自主規制」、音楽放送の音量やイベント回数を制限する「営業音の自主規制」など、「鎌倉市海水浴場における自主規制」を徹底。
由比ガ浜海水浴場では、入れ墨の露出禁止、週末・休日を中心としたセキュリティーサービスによる警備などを実施しました。
■参考|[鎌倉市海水浴場における自主規制|鎌倉市

鎌倉市海水浴場の入れ墨(タトゥー)禁止と警備員 鎌倉市海水浴場の入れ墨(タトゥー)禁止と警備員

由比ガ浜海水浴場Facebookページより
【逗子海水浴場】

来場者数は昨夏比43%減「安全安心を優先」|カナロコ

逗子市の平井竜一市長は2013年9月2日の記者会見で、1日に終了した今夏の逗子海水浴場の来場者数が、41万7000人と昨夏比43%減だったことを明らかにした。
平井市長は、7月に起きた殺傷事件(下記注で紹介)など治安悪化や風紀の乱れを一因に挙げつつ、「仮に来場者数が減るとしても市民にとって優先すべきは安全安心だ」と強調。来夏に向け、多くの若者が集まり「クラブ化」する海の家での音楽規制などを念頭に置いた条例改正への意欲をあらためて示した。
市に寄せられた苦情などの相談件数は1日までに103件で、昨夏の31件に比べ3倍超に膨らんだ。治安悪化に対する対策強化の要望が40件。一方で、音楽規制に反対する内容も23件寄せられた。
市は今後、逗子署や県の関係機関でつくる対策協議会や、11月以降に行うパブリックコメント(意見公募)や市民説明会などでの意見を集約し、来年2月の市議会定例会に条例改正案を提出したい考えだ。
逗子海水浴場への来場者数は、2012年夏までの過去3年が50万~70万人台と多く、2009年以前は20万~40万人台で推移していた。

上記引用内の(注)。逗子海岸の海の家で起きた殺傷事件についてはコチラ。

体に刺し傷2人が死傷、トラブルか|カナロコ

2013年7月14日午後8時半ごろ、逗子市新宿1丁目の駐車場付近で「2人の男性が血まみれで倒れている」と女性から110番通報があった。逗子署員が駆けつけたところ、2人にはいずれも刃物のようなもので刺された傷があり、2人とも病院に運ばれたが、1人が間もなく死亡した。同署は殺人事件として調べている。
逗子署によると、死亡したのは、横須賀市在住で職業不詳の男性(30)。逗子海岸中央付近の国道134号近くの砂浜に倒れていた。もう1人は重傷で、住所、職業、氏名不詳。死亡した男性から20~30メートル離れた国道に接する駐車場前の歩道に倒れていた。
同署は2人が暴力団員の可能性があり、何らかのトラブルでけんかになったのではないかとみて調べているが、トラブルになった現場は分かっていない。凶器とみられる刃物のようなものも見つかっていない。
逗子海岸で営業する海の家の男性店長によると、死亡した男性は事件のあった夜、何人かの仲間とともに店に来ていた。男性は過去に何度か訪れており、男性店長は「これまでもめ事になったことはなかった。事件のあった日も、店内ではトラブルになっていなかったと思う」と話した。

さらに、こんなところにも影響が。

キマグレン経営の逗子海岸「音霊」が今月末で閉店へ|47news

今年で9年目を迎えた神奈川・逗子海岸の海の家兼ライブハウス「音霊 OTODAMA SEA STUDIO」が、今月末をもって閉店することが23日、明らかになった。同店を経営するキマグレンのKUREIが、運営会社の「音遊 代表取締役クレイ勇輝」名義で発表した。
KUREIは「“自分が子供だった頃のように、海までの道が活気に溢れる元気な街になってほしい”という想いで、「海で音楽を楽しめる場所」を創ろうとこれまで尽力してまいりましたが、逗子海岸での企画を今夏いっぱいで閉幕する運びとなりました」と報告。
「2014年夏、本来なら皆様と10周年を逗子海岸で盛大に祝いたかったのですが、このようなご報告となってしまい本当に残念に思います。そして、楽しみにしてくださっていたOTODAMAファンの皆様、大変申し訳ございません」と無念さをにじませた。
同市は2013年8月7日、「安全で快適な逗子海水浴場を取り戻すための対策協議会」を設置し、逗子海水浴場の騒音や風紀の乱れに関する苦情が増加しているとして、海の家の音楽規制強化を検討する方針を明らかに。これに対してKUREIは自身のツイッターで「物事には賛否両論は付きものです。ただ「音楽禁止=治安や風紀の改善」は安易過ぎませんか? 僕は音楽の前に禁酒すべきでは?と思います」と自身の考えを書き込んでいた。
「ここで身を引くことが逗子海岸のOTODAMAからの最後のメッセージになります。この事が未来の逗子海岸のためになると僕らは信じております」としたKUREIは「また違った形で近い将来皆様にお会いできる事を楽しみにしております。残りの9日間、音霊の夏を思いきり楽しみましょう!!長い間、本当にありがとうございました!」と結んだ。

【総括】

「クラブ化」防止により、海水浴客が6割程度に減ったものの、「健全になった」と手応えを感じている江ノ島海水浴場協同組合。同様に6割程度となるも、さらなる「クラブ化」防止に着手する逗子海水浴場。鎌倉市海水浴場を含め、来夏も「家族で安心して過ごせる海水浴場」が大きな課題・目標となるでしょう。
個人的な意見としては、2010年の夏に施行された「神奈川県内すべての海水浴場の喫煙規制(指定場所以外は禁煙)」のように、それが公的な場所であれど、私的な嗜好や娯楽に干渉する規制や条例にはあまり感心できません。
しかし、小さい頃から慣れ親しんだ湘南・鎌倉の海水浴場&海の家が、ここ数年、昼間から深夜まで「クラブ化し」、大音量の中、トランスした男女が半裸で抱き合い奇声を発している姿を見て、「すっかり変わってしまったな」と、とても残念な気持ちになっていたことも事実。
「クラブ化」を良しとする海の家も、利用客も、言いたいことは多分にあるでしょう。しかし、今回の規制や条例は、近隣住民や海水浴客など、「公的(一般的)」なストレスがピークに達した結果。これをリセットし、状況を改善する方法として、致し方ない手段だと思います。
目指すは「家族もカップルも、子供たちも若者グループも、開放感たっぷりに海を満喫できる海水浴場」。「迷惑駐車をしない」「ゴミは持ち帰る」など、すべての海水浴客が道徳的意識を高めることも大切です。もちろん「強引な客引きをしない」、「秩序ある運営を行なう」など業者(海の家)側の公序良俗的行為も。。。
「楽しい・安心・安全」な海水浴場&海の家を取り戻すのは、一人一人の責任ある行動。「ビーチでの飲酒禁止」など、規制や条例でガチガチになってしまわぬ前に。。。
【2013年9月15日追記】

海の家の音楽放送禁止を実行した「江の島海水浴場組合」に、神奈川県藤沢署から感謝状が送られました。

海の家「クラブ化」阻止 警察が江の島海水浴場組合に感謝状|毎日新聞

神奈川県警藤沢署は12日、海水浴場の健全化に貢献したとして、同県藤沢市片瀬海岸西浜の栗原道代・江の島海水浴場協同組合理事長と東浜の臼田征弘(ゆきひろ)・同海水浴場営業組合長に感謝状を贈った。海の家を統括する組合に、警察が感謝状を贈るのは珍しい。
片瀬海岸では昨夏、大音量で音楽を流して若者がダンスに興じる「クラブ化」が問題となった。地域住民や市から改善を求められた西浜は今夏、「存続の危機」と捉えて海の家から一切音楽を流さないことを決めた。
海の家は西浜に25軒、東浜に21軒ある。両組合とも地域住民と協力し週末にパトロールした結果、今夏の片瀬海岸への110番出動は計344件で昨夏比3割減、8月は162件と4割減だった。
和智勉署長から感謝状を受け取った栗原理事長は「海の家を経営する一人一人が危機感を共有してくれたのが成功の原因」と語った。臼田組合長も「クラブ化や暴力団につながる業者に目を光らせ排除した」と話した。
西浜の音楽禁止措置を受け、県は他の海水浴場で「クラブ化」するのを懸念。5月に県内22海水浴場に12項目のガイドラインを示したが、「音楽の無い海の家なんて」と対策を講じる海水浴場は少なかった。隣接の鎌倉、逗子市の海水浴場では条例などにより締め出す動きも出ている。
栗原理事長ら2人は「条例で締め出された業者が江の島に帰ってくる可能性は十分ある」と表情を引き締めていた。


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