鎌倉の世界文化遺産登録ならず「武家遺跡少ない」と不記載勧告


市を挙げて取り組んでいた、鎌倉の世界文化遺産登録。
今日、2013年5月1日未明、文化庁が「世界遺産への登録がふさわしくない」との勧告を受けたと発表しました。

弁天橋からの富士山 鶴岡八幡宮の本殿

世界文化遺産登録への「記載」勧告をされた富士山と、「不記載」勧告となった鎌倉(鶴岡八幡宮)

今回、ともに登録を目指し、6月に世界文化遺産登録される見通しとなった富士山。
富士山が「日本の国家的象徴」と高く評価され、自然物にも関わらず文化遺産登録が確実化されたのに対し、鎌倉は「日本で最初に武家文化が生み出された場所」として登録を目指してきたものの、「対象となる武家遺跡が少ない」と、厳しく評価されました。

世界遺産登録について|鎌倉市

鎌倉の歴史的遺産は、1992年(平成4)に「古都鎌倉の寺院・神社ほか」として、ユネスコ世界遺産委員会の暫定リストに掲載されました。
2004年(平成16)に「武家の古都・鎌倉」という考え方(コンセプト)をまとめ、このコンセプトに基づき、国指定史跡の指定や保存管理計画の策定、対象構成資産の周辺の景観や環境を保護する緩衝地帯(バッファゾーン)の検討などを行いました。また、対象構成資産が鎌倉市だけでなく、隣接する横浜市、逗子市にも所在することから、2007年(平成19)に、横浜市、逗子市及び広域行政を担う神奈川県の4県市の連携による、地元自治体としての準備体制を整えました。
そして、2012年(平成24)1月には、「武家の古都・鎌倉」の推薦書(正式版)が、国からユネスコ世界遺産センターへ提出され、9月24日から27日まで、ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)による現地調査が行われました。
2013年(平成25)5月頃にはイコモスから評価結果が勧告され、6月に開催されるユネスコ世界遺産委員会における審査を経て、登録の可否が決定される予定です。

イコモスとは、国際記念物遺跡会議(ICOMOS/ International Council on Monuments and Sites)の略で、ユネスコ内の世界遺産委員会を諮問する機関。各国政府から推薦された遺産に対して、専門家を中心に調査を行ない、評価を下して世界遺産委員会に報告しています。
このイコモスが出した鎌倉への評価は、4つある区分の中でいちばんランクの低い「不記載」。決議である6月の世界遺産委員会でも「不記載」となってしまうと、「再推薦は不可」となる厳しいものです。

イコモスによる世界遺産登録評価結果の4つの区分

1、記載(Inscription):世界遺産一覧表に記載するもの
2、情報紹介(Referral):追加情報の提出を求めた上で次回以降に再審議するもの
3、記載延期(deferral):より綿密な調査や推薦書の本質的な改定が必要なもの。推薦書を再提出した後、約1年をかけて再度諮問機関の審査を受ける必要がある。
4、不記載(Not to inscribe):記載にふさわしくないもの。(世界遺産委員会で不記載決議となった場合、例外的な場合を除き再推薦は不可。)

文化庁の発表は下記。不記載の理由としては、現在の寺社等が当時のまま残されているものではないこと、歴史的重要性が都市全体として示されていないこと、などが挙げられています。
■詳細はコチラ↓
文化庁発表 世界遺産諮問機関による評結果及び勧告について|鎌倉市
今回については、なにより最悪の「不記載」となることを避け、別の角度から世界遺産登録を目指すなど、市だけではなく政府と一帯となり、新たな提案方法を考える必要がありそうです。
もちろん、世界遺産登録が、本当の意味での地域活性につながるのか、という点の議論を含めて。


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